薫子さんと主任の恋愛事情
「これ、俺がもらってもいいとか?」
「そのつもりで出したんですけど、いるんですか?」
「いるに決まってるだろ! て言うかさ、おまえ付き合って一日目で男に鍵渡すって、どういうことだよ?」
「どういうことと言われても。大登さんもくれたから、私のも渡したほうがいいのかなと思って。大登さんなら信用できる……うぐっ!!」
まだ喋ってる途中なのに力いっぱい抱きしめられて、喉の奥から変な声が出てしまった。しかもそのあとも、ギュウギュウと音がするほどホールドされて息苦しくなってくる。
「ひ、ひ、ひろ…とさん、く、くる……しい」
レスラーがギブの時にするように大登さんの背中を叩くと、それに気づいた彼が慌てて私の身体から離れる。
「わ、悪い。大丈夫かっ?」
「も、も……」
もう少しで窒息しそうでしたと言おうとしたけれど、まずは呼吸と新鮮な空気を身体いっぱい摂り入れる。
最後に呼吸を整えるために深呼吸すると、意識もしっかりとして自分を取り戻した。
「だ、大丈夫です。でも大登さん、急に一体どうしたんです?」
抱きしめられるのは嬉しいけれど、ここはまだ外だし恥ずかしい。人の目を気にしながらも、大登さんに近づき問いただす。