薫子さんと主任の恋愛事情
何度も角度を変え、そのたびに甘く深くなるキス。息が苦しくなってきた。
どうしたらいいのかわからず苦しさから眉間に皺を寄せると、それに気づいたのか大登さんの唇が名残惜しそうに離れた。
「悪い。一年以上片思いしてたからな。大人の俺でも、さすがに止められなかった」
「いえ、そんな……」
それって、私のことが好きでたまらない……ってこと? そんな言葉、颯にだって言われてことがない。
自分勝手な解釈に顔が緩むと、顔が熱くなってきたのがわかる。
恥ずかしさから顔を窓の方に向けると、そこには井澤のおばちゃんの顔があって。驚きすぎた私は、一瞬息が止まる。
「……おばちゃんっ!!」
その声に大登さんも「どうした?」と驚いた様子で、慌てて車から降りるとおばちゃんに駆け寄った。私も鞄を掴み降りると、大登さんの隣に並ぶ。
「とし子さん、遅くなってすみませんでした」
頭を下げる大登さんに、私も「すみませんでした」と言うと一緒に頭を下げた。
「いいのよ、いいのよ。いいものも見れたし。若いって、いいわねぇ~」
「いいものって……」
まさかそれって、大登さんとキス……してるところ?
大登さんを見れば、彼もおばちゃんの言ってる意味を理解したらしく、私を見て肩をすくめると苦笑した。