泣き顔に甘いキス
Ⅰ-Ⅱ
「ホント頼む!せめて見学だけでも…!」
顔の前に手を合わせて顔を下げる男の子。
どうやらバスケ部から駆り出されて来たらしい。
「いや、本当に無理なので……」
あまりの勢いにしどろもどろになってしまっている私。
昼休み。
愛ちゃんがトイレに行っている隙に、人の少ない階段の踊り場に連れてこられてしまった私。
断る暇もないぐらい強引に連れてこられちゃった。
「マジでこの通り!先輩からも頼まれてんだよ……」
眉をハの字にして私をじっと見てくる。
……そんな顔されてもなぁ。
「私バスケとか知らないし…?」
「全然大丈夫!ちょーっとだけ雑用あるけど、もちろん重い物とか持たせないし、手とか汚れることさせないから!」
「……それじゃ、私マネージャーになる意味なんて……」
ないから。