泣き顔に甘いキス
どこか現実味のないまま私は教室に戻った。
がやがやとうるさい廊下を抜けて、購買にでも行っているのか人口密度の低い教室に入る。
まず目についたものは窓際でぼんやりと頬杖をつきながら空を見ている愛ちゃんだった。
彼女の周りだけ切り取られたように、美しい。
どこか愁いを帯びた表情をしていて、よく見ればイヤホンで曲を聴いている。
ゆっくりとした瞬きの一つ一つが更に彼女を切なく見せる。
本当に、どこまで彼女は美しくなるのだろうか。
教室を見まわたすと、いくつもの視線が彼女を同じように見つめていた。
でも彼女はその視線に気づくことも、自分の視線を絡ませることもない。
愛ちゃんもまた、金髪くんのように現実味のない。
ふと二人は似ているな、と思った。