泣き顔に甘いキス
「……全力で阻止しようかな」
苦笑いでそう言うと、彼女はクスリとだけ笑った。
でもその笑みは危なさと色気をむんむんに含んでいて。
慌てて話題を変えるべく、さっきから私の思考を占領している金髪くんの話題を出した。
「そ、そういえばさっ!金髪ですっごくカッコいい人に会ったの!」
_______あ、と言葉が口からこぼれてしまってから思った。
しまった、と。
もしあの金髪くんに愛ちゃんが興味を持ったらどうしようと。
目をまんまるとして驚いている愛ちゃんに、早速後悔を募らせた。
お願い、彼に興味何て持たないで_________。
自分で彼女に打ち明けた癖に、勝手に矛盾した考えを持つ自分。
愛ちゃんは、ただ恐ろしいほどの美貌を持っているだけなのに。
私はそれに比べてこんなにも醜い。
「_________夏奈があたしに男の話なんてしてきたこと、初めて」
ほっと、体の力が抜けた。
たらりとワケもなく掻いた冷や汗が背筋を伝ったのが感じ取れた。
「………す、すっごくかっこよくて…」
「あれ?夏奈ってイケメン好きなの?」
頬についていた手を、顎の前で組み直し興味津々そうに身を乗り出してきた愛ちゃん。
つくづく愛ちゃんの興味を示す基準が分からない。
でも私はあの彼のことをこれ以上愛ちゃんに語りたくなくて。
「そ、そうなのっ!最近カッコいい芸能人にもハマってて……。newshine(ニューシャイン)ってアイドルグループなんだけど…」
咄嗟に最近覚えたアイドルグループの名前を出した。
今テレビで最も騒がれているグループ。
略称や愛称は"シン"で、タイプの違う美形5人の集まりだ。
そんなことを思いながら愛ちゃんの顔を見ると………心が、凍り付いた。
「…………あぁ、シンねぇ。あたしもよく知ってる」
先ほどの愁いを帯びていた表情とはまた違い、今にも泣きだしそうな表情をしている愛ちゃん。
…………なんで、そんな顔しているのだろうか。
初めて見た表情に、心が凍った。
本当に彼女は残酷なまでに綺麗で美しい。