泣き顔に甘いキス
「顔は…蒼汰(そうた)くんが一番あたし的には好きだなぁ」
でもさっきの表情から一変して、愛ちゃんはいつもの妖艶な笑みに戻って。
「そ、そうなんだ……」
私は気の抜けた声しか出なかった。
それにそもそもまず、メンバーの顔と名前がまず一致しない。
こんなことになるならこの話題を出さなきゃよかったと、また後悔した。
そして彼女がアイドルのことをよく知ってるなんて、意外だった。
私の覚えている限りでは_____愛ちゃんは、芸能人だけど初めて男の名前を口に出したのだ。
「…………でも、結愛(ゆあ)だけは絶対に好きになんてなれないけどねぇ」
_________彼女が小さく嘆いた意味深な言葉は、私には聞き取れていなかった。
妖しく笑った彼女に、芽生えた小さな違和感など消えてしまった。