泣き顔に甘いキス
ガラガラーと、図書館の扉を開けると静かな空間には似合わない音がかなり大きく響いた。
………不釣り合いだな。
そう思い、閉めるときには音が立たないようにゆっくりと閉めた。
上靴を脱いでゆっくりカウンターへと足を進める。
でもカウンターには……不在、と簡単に書かれた札が置かれてあっただけだった。
「………嘘でしょ」
思わずため息ながらに呟いてしまう。
わざわざ図書館まで足を運んだというのに目的の人は不在。
図書館の先生がいなければ本を借りることなどできないのだ。
思わずもう一度不在と書かれた無機質な文字を見つめてしまった。
あー、もう最悪。
教室に戻ることすら億劫だ。
胸の中に芽生えた憤りをため息とともに吐き出そうとしたとき。
ふと、きらりと光るものを見た。
キラキラキラキラ
輝いている。
一瞬、私は自分の頭がおかしくなって錯覚を見ているのかと思った。
でも違う。
そして窓から差し込んでいる淡い日の光でもない。
……なにだろう、と好奇心が掻き立てられた。
あいにく私は視力がよくないので、コンタクトをつけているもののあまり遠くのものが見えないのだ。
なんと不便な、なんて思いながらも足は自然と光のほうへ向かっていた。