泣き顔に甘いキス
歩いているうちにその光は何かの反射なのか……目にあたって、目をつぶってしまうときもあった。
でもその元となる存在は何か、本棚にちょうど隠れていて何も見えない。
記憶をたどればこの先には机といすが窓際に置かれているスペースがあるな、と思った。
そしてそこには_________きれいな顔をしている、眠りの王子がいた。
酷く比喩的な表現をしてしまったと自分でも思う。
でも、寝ている男の姿を見て一度息が止まったのだ。
少しの間だけ、いつもどのように呼吸をしていたかわからなくなった。
胸が、鼓動が、今までにないぐらい激しく高鳴りだしたからだ。
苦しくて苦しくて、ぎゅーっと制服の胸元を抑える。
いつか会った、金髪の男がそこにいた。
きらきらと輝いていたのは光が金色に輝く髪に反射したからで。
すー、すーという寝息とともに体が少しだけ上下しており、それに合わせるかのように光もきらきらと反射している。
きれいだと、思った。
男も。
きらきら光る光も。
もう一度苦しい胸元を抑えてた。
息が、できない。
苦しい。
そんな感情とともに_____再び会えた喜びが胸に溢れ出す。
苦しいけれど、幸せな出来事だ。
そっと私は男に一歩近づいた。
「…………」
不思議な感覚。
芸術のような男。
触れてみたい。
と、危ない欲求が次に頭を占めだす。
「…………」
この男のそばにいるだけで、自分が自分でなくなってしまうような感覚に陥ってしまう。
今まで知らなった自分が、突然姿を現したようなそれで。
伸ばしかけていた手をゆっくりと戻し、目を閉じた。
瞼の裏は暗いはずなのに、残像で光輝いて見える。
もう一度、目を開けた。
男は相変わらずそこにいて、私はもう一度だけ男の綺麗さを目に焼き付け身を翻した。