これが私の王子様
「いいの?」
「遠慮しないの」
「有難う」
「じゃあ、まずは――」
詩織はゆかを連れ教室を出ると、わかり易く指で示しながらゆかに学校の構造を説明していく。
「教室は、この階段を使って二階ね。実習室は、更にその上の階で……あの廊下の先は体育館。で、他は……」
詩織の説明ひとつひとつに頷きながら、ゆかは学校の中を見て回る。
彼女にとって見る物全てが珍しく、どれも新鮮に映る。また、建物全体からいって、こちらの方が断然新しい。
以前の学校は全体的に古めかしく、今年で創立60年と聞いていた。
一方この学校は、創立5年。近代的なこの建物は、情報通の詩織の話では名のある一流の建築家が設計に携わったという。
そのことにゆかは、目を丸くしてしまう。
同時に、真新しい備品で揃えられた立派な学校に転校できたことに嬉しさを覚える。
そして登校初日に、何でも知っている気さくな生徒に出会えたことも大きい。
「ねえ、知っている?」