これが私の王子様

 父親が呼んでいる。

 と、ストレートに言うべきか。

 いや、この場合は遠回しがいいか。

 和人はこういう事が苦手なので、苦労する。

「父さん、アドバイスを……」

「自分で考えろ」

「……わ、わかったよ」

 頼みの父親は、冷たく引き離す。

 別に息子を嫌っているわけではなく、これくらい自分で考えられなければ先が苦労すると、わかっているからだ。

 色恋沙汰は、甘くはない。

 そのことを十分に理解しているから、態と息子を突き放すような発言を行い、成長を促す。

「待っているぞ」

「と、父さん」

 懸命に呼び止めるが、雅之は振り返ることはない。

 突然の父親からの命令に、和人は項垂れることしかできなかった。
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