これが私の王子様
「売っているクッキーより、美味かった」
「そ、そうでしょうか……」
「水沢さんって、料理が上手いんだ。あれだけのクッキーを作るなんて、なかなかできないよ」
和人の言葉のひとつひとつが、ゆかの感情を刺激する。
クッキーを美味しく食べてもらっただけではなく、こんなに素晴らしい感想まで言ってもらえた。
意識が半分飛んでしまいそうな雰囲気であったが「頑張れ」と自分自身に言い聞かせ、何とか頑張る。
「で、菅生から聞いている?」
「お、お料理の件……でしょうか」
「そう」
「わ、私で宜しいのですか?」
「勿論」
その言葉と共に向けられたのは、爽やかな笑顔。
まさかこのような笑顔を見せられるとは思ってもみなかったので、完全な不意打ち。
同時に、女子生徒達が和人と「王子様」と呼ぶ理由も知る。
まさに、物語の中に登場しそうな人物。
何より、とても優しい。