これが私の王子様

「お料理ですが、お弁当の方が……」

「弁当というか、沢山食べたい」

 和人の何気ない言葉に、ゆかはキョトンっとしてしまう。

 彼にしてみれば弁当箱に入っている料理では物足りなく、できるものならテーブルいっぱいに並べられた料理を食べたかった。

 ふと、いいことを思い付く。

 父親から、来週の日曜日に連れて来いと言われている。その時、一緒に料理を作ってもらえばいい。

 そう考えた和人は、早速ゆかの予定を尋ねる。

「来週……ですか」

「父さんが会いたがっている」

「ど、どうしてですか?」

「爺ちゃんの誕生日パーティーの時に、水沢さんの話をして……それで、父さんが興味を持った」

 だから、日曜日に実家に連れて来るように言われている――と、説明する。

 突然の誘いにゆかは即答できず、それ以上にどうして自分に興味を持ったのか、そちらの方がわからなかった。
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