これが私の王子様

「食材?」

「料理」

「結城君の実家で?」

「そう」

「結城君以外の方にも……」

「いや、俺だけ」

 てっきり和人以外の家族にも作るものと勘違いしていたゆかだが、食べるのは和人だけと知ると「結城君だけなら……」と、思う。

 最初はどうしようかと迷っていたが、和人が喜んでくれるのなら――と、無言で頷き返す。

「また、水沢さんの料理が楽しめる」

「好き嫌いは……」

「ない」

「でしたら、好きな食べ物は?」

「美味しい料理」

 嫌いな物がないことは作る側としては有難いが、逆に好きな食べ物がないとなるとレシピを考えるのが難しい。

 何を作ればいいかと考えるが、独特な緊張の中でいる今、なかなかレシピが思い付かない。
< 114 / 211 >

この作品をシェア

pagetop