これが私の王子様
「食材?」
「料理」
「結城君の実家で?」
「そう」
「結城君以外の方にも……」
「いや、俺だけ」
てっきり和人以外の家族にも作るものと勘違いしていたゆかだが、食べるのは和人だけと知ると「結城君だけなら……」と、思う。
最初はどうしようかと迷っていたが、和人が喜んでくれるのなら――と、無言で頷き返す。
「また、水沢さんの料理が楽しめる」
「好き嫌いは……」
「ない」
「でしたら、好きな食べ物は?」
「美味しい料理」
嫌いな物がないことは作る側としては有難いが、逆に好きな食べ物がないとなるとレシピを考えるのが難しい。
何を作ればいいかと考えるが、独特な緊張の中でいる今、なかなかレシピが思い付かない。