これが私の王子様

 和食。

 洋食。

 中華かイタリアン。

 はたまた、別の料理か――

 様々なレシピが、ゆかの頭を駆け巡る。

「で、水沢さん」

「は、はい!?」

 突然名前を呼ばれたことに、声が裏返ってしまう。

 ゆかの面白い反応に、和人は「やっぱり、寄って来る女の人と違う」と、新鮮な印象を抱く。

 そして表情を緩めつつ、あるお願いをする。

 それは、ゆかの携帯番号とメールアドレスを教えてほしいというもの。

 いちいち詩織に間に入ってもらうのは面倒で、そのふたつを知っていれば、直接連絡が取れて便利だと話す。

「いい?」

 と言いつつ、和人は先にポケットからスマートフォンを取り出す。

 それを見たゆかは、何か不都合があったのか、なかなか取り出そうとはしない。

 それどころか、恥ずかしそうにしている。
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