これが私の王子様

「やっぱり、駄目?」

「そういう訳では……」

「持っていないとか?」

「いえ、持っています」

「なら、教えてくれても……」

「私、スマートフォンじゃなくて……」

 躊躇いつつ取り出したのは、猫のストラップが付いた携帯電話。俗に言う、ガラケーという奴だ。

 ゆかにしてみれば、殆どの生徒がスマートフォンを使っている中、自分が古い携帯電話を使っていることに引け目を感じていたという。

 だから、和人に見せるのが恥ずかしかった。

「そういえば、薫と直樹もスマホだった」

「うちの親は厳しくて、スマートフォンは社会人になってから……と。でも、皆はスマートフォンで……」

「人それぞれだよ」

 スマートフォンがなくても不便でなければ、それでいいと和人は言う。

 それに携帯電話でも通話とメールができるので、特に問題はない。

 また持っていないからといって、和人は馬鹿にはしない。
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