これが私の王子様

 てっきり馬鹿にされるのではないかと危惧していたが、和人が「人それぞれ」と言ってくれたことに、ゆかは安堵する。

「そういえば、詩織のそのようなことを……」

「だろう?」

「結城君って、詩織に似ています」

「菅生に!?」

 それは流石に勘弁と、和人は苦笑する。

 詩織は大らかで器が大きいが、その反面男勝りの部分がある。

 気に入らなければ平気で噛み付くあたりは、驚愕さえ覚える。

 野獣。

 ある意味、この言葉が似合う。

「菅生には、内緒で」

「わかっています」

「で、いいかな?」

「ど、どうぞ」

 思えば、異性で携帯番号とメールアドレスを登録しているのは、父親くらいだ。

 後は以前通っていた学校での友人と、この学校では詩織だけ。だから登録の最中、手が震えてしまう。
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