これが私の王子様

 仕方ない。

 これが、和人の気持ちだった。




 午後の授業中、ゆかは何気なく窓の外を眺める。

 校庭には、多くの生徒が溢れていた。

 それを見たゆかは、和人のクラスが体育の授業を行っていることを思い出す。

 和人は成績優秀の他、スポーツ万能。

 マラソンで、苦労することはない。

 校庭に、黄色い悲鳴が響く。

 その声音は教室で授業を受けている生徒の耳にも届き、多くの女子生徒が手を止め見入る。

 かっこいい。

 やっぱり、凄い。

 早い。

 等々、褒め言葉が続く。

 彼女達の言葉を聞きながら、和人の姿を凝視する。

 マラソンが苦手なので、これほど早く走れるのは羨ましい。

 特に持久力が乏しく、途中でいつもバテてしまい、完走するのがやっとだ。
< 120 / 211 >

この作品をシェア

pagetop