これが私の王子様

「そうなの?」

「教えてほしいって言う人が多いみたいだけど、そういう人には絶対に教えないみたい。ほら、教えたら後が煩いじゃない。しつこいほど「私と、付き合って下さい」なんて、言われるに決まっているもの」

「……凄い人気」

「だから、知られないように……ね」

「うん」

 ゆかは再び、窓の外を眺める。

 マラソンは終盤に差し掛かったのか、全体的に速度が遅くなっている。

 その中で一定の速度を保っているのは和人と薫で、疲れを知らないのか、相変わらず彼等が先頭を走っていた。

 和人と薫の一位争い。

 勿論、白熱しないわけがない。

 これほどまでの人気者から、日曜日実家に来るように誘われた。

 尚且つ、携帯番号とメールアドレスも教えてもらった。

 それにクッキーの味を褒められ、今度は料理を作ってほしいと頼まれた。

 これは、夢。

 と、錯覚を覚える。
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