これが私の王子様
「あ、有難うございます」
「お荷物は、私が――」
「大丈夫です」
「申しました通り、旦那様から貴女様のお世話をするように、申し付かっています。ですので、お荷物を――」
今まで自分のことは自分でこなしてきたゆかにとって、誰かに何かをやって貰う経験は殆どない。
だからこのように恭しい態度を取られるのも、嬉しい反面緊張の原因となってしまう。
「水沢さん、任せればいいよ」
そう、声を掛けてきたのは和人。
二人のやり取りを耳にし、窓を開け意見を出す。
「で、でも……」
「それが、彼の仕事だよ」
「そ、それでしたら……」
「お任せ下さい」
和人の言葉に従い、ゆかは差し出した四つの袋を差し出す。
勤はそれを快く受け取ると、助手席のドアを開き載せていく。
一方、ゆかは和人の手招きに頷くと、後部座席に乗り込んだ。