これが私の王子様

「時間、掛かったね」

「沢山、買ったので……」

「今から楽しみだ」

「頑張って作ります」

 ゆかの宣言に、和人は嬉しそうにうんうんと頷く。

 しかしゆかにとって、料理は普段から作り慣れているので、特に問題はなかった。

 彼女にとっての試練は、和人の父親に会うこと。

 それも見定められるのだから、落ち着くことができない。

 荷物を載せ終えた勤が運転席に座り、車を出発させる。

 と同時に後部座席の窓が閉められ、外部と遮断される。

 目的地は、和人の実家。

 ゆかの心臓が、激しく鼓動しだす。

 視線を空中に泳がせているゆかに、和人は覗き込むかたちで「緊張している?」と、尋ねる。

 和人からの質問にゆかは無言で頷くと、急に俯いてしまう。

 そして二人の間に漂うのは、微妙な空気。

「何か、話をしようか」

「結城君に、お任せします」

「じゃあ、水沢さんのことを聞いていい?」
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