これが私の王子様

 そして――

 目の前に、巨大な建物が見えてくる。


◇◆◇◆◇◆


 この建物?

 が、ゆかの第一声。

 彼女の視界に映り込んだのは、テレビ以外では見たことのない建物。

 和風建築のその建物は巨大で、高級旅館の雰囲気を漂わしている。

 だが、まぎれもなくこの建物は、和人の実家。

 金持ちだから。

 と、自分自身に言い聞かせるが、すぐに受け入れられるほど、ゆかの神経は図太くはない。

 正面の門が、自動で開く。

 そのひとつひとつに、ゆかが反応する。

 敷地内に入れば、違う風景に驚かされる。庭師によって美しく手入れされているのは、日本庭園。

 和人はこの光景を見慣れているので、特に反応を示すことはしない。

 しかしゆかは、和人とは正反対の行動を見せる。

 食い入るように日本庭園を眺め、時折感動のあまり溜息を漏らす。
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