これが私の王子様
玄関前に、車が停車する。
運転席から勤が下車すると、後部座席のドアを開く。
先に、和人が下車する。
このようなことをしてもらうのが「当たり前」と認識しているらしく、勤に礼を言うことはしない。
和人の行動を眺めていたゆかは、それに驚いたのか、なかなか降りようとはしない。
「どうぞ」
「あ、有難うございます」
「いえ」
差し伸べられた手を取り、ゆかは下車する。
それに合わせ助手席に買い物袋を取りに行こうとするが、途中で勤に制されてしまう。
勤曰く「買い物袋は、自分が運んでおく」ということ。
だから、早く和人と一緒に行った方がいいと促す。
「で、ですが……」
「旦那様を待たせてしまいます」
「そ、それでしたら……」
ゆかは勤に対し申し訳なさそうに頭を垂れると、玄関先で立ち止まっている和人のもとへ急ぐ。