これが私の王子様
和人はゆかが来たのを確認すると、敷居を跨ぎ建物の中へ立ち入る。
ゆかも和人の後を追い敷居を跨ぐと、歴史の長い日本家屋が醸し出す雰囲気に圧倒されてしまったのか、茫然と立ち尽くす。
「水沢さん?」
「何だか、凄くて……」
「大きいから?」
「大きさもそうですが、調度品も……」
一体、幾らなのか?
下世話になってしまうが、これだけ立派な調度品を見ると、ついつい値段が気になってしまう。
(壊したら、お父さんの給料じゃ払えないかも)
間近で見たい気持ちもないわけでもないが‘もしも’ということも考えられるので、迂闊に近付けない。
ゆかが見ているのは、焼き物の壺。
それを見た和人は「欲しいなら、父さんに聞くけど」と、衝撃的な言葉を発する。
勿論、間髪入れずにゆかは頭を振る。
高価な品物を強請ることはできず、何よりこのような壺を貰っても置くところがない。
それどころか盗まれるのではないかと、冷や冷やした毎日をおくらないといけない。