これが私の王子様
「なら、掛け軸の方がいい?」
「いえ、どちらも……」
「そっか」
ゆかに何かプレゼントしたかったのか、和人は残念そうにしている。
しかし「いらない」と言っている物を無理矢理手渡すわけにもいかないので、和人はそれ以上何も言うことはしない。
ただ靴を脱ぎ、玄関を上がる。
ゆかも同じように靴を脱ぎ玄関を上がるが、唯一違っていたのは、きちんと靴先を揃えていること。
一方、和人は乱暴に脱ぎ捨てている。
見兼ねたゆかが代わりに和人の靴を揃え並べる。
「あ、有難う」
「どういたしまして」
いつも脱ぎ捨てるのが定番となっている和人にとって、ゆかが靴を直してくれたことに申し訳なくなってしまう。
どちらが、育ちがいいのか――
なんだか情けなくなってくる自分に、和人は苦笑する。
「父さんは、床の間で待っている」
「お待たせしているのですか!?」