これが私の王子様

「まだ約束の時間になっていないから、大丈夫。父さんは結構前から待つのが癖で、会社でも部下が後から入って来る――という感じになっている。勿論、指定している時間を超えなければ怒らないよ」

 和人の説明を聞き、ますます彼の父親がどのような人物なのか、わからなくなってしまう。

 普通、グループの会長なら、後からやって来るもの。

 だが、彼の父親は違う。

「気難しい人ですか?」

「いや、どちらかといえば大らか」

「優しい方の方が……」

「父さんは、優しいよ」

「そ、そうですか」

「緊張しなくていいよ」

「そんなこと、言われても……」

「ほら、深呼吸」

 別に、取って喰らうわけではない。

 ただ「水沢ゆか」という人物がどういう性格をしているのか、知りたいだけ。

 勿論、雅之のお眼鏡に掛かれば、和人と恋人関係に発展させようとする。
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