これが私の王子様
和人の言葉に従い、ゆかは深呼吸を行う。これによって多少の緊張は解れたが、心臓の力強い鼓動は続いていた。
ゆかの雰囲気が変わったことに、和人は父親が待つ床の間へ案内する。
広い建物だが、掃除が行き届いている。
特に廊下は窓から差し込む陽光を反射させ、二人の姿が映し出されていた。
お手伝いさんとか、いるのかな。
等々考えながら、和人の後を続く。
ふと、ひとつの部屋の前で和人は脚を止める。
そして発した言葉というのは「入っていい?」という疑問。
「構わない」
力強く、凛とした声音が響く。
その声音に、ゆかの身体がビクっと震えた。
「どうぞ」
「は、はい」
和人が障子を開き、ゆかを招き入れる。
と同時に視界の中に飛び込んできたのは、鋭い眼光を放つ一人の男。
和人の父親ということで中年を想像していたが、中年という言葉が似合わないほど若々しい。
「この娘か?」