これが私の王子様
「水ちゃんも、そう言うの?」
「水ちゃん?」
「いけない?」
「名前の方が……」
「じゃあ、ゆか」
詩織に名前を呼ばれ、ゆかはコクコクと頷く。
一方詩織は嘆息すると、先程の件について愚痴を漏らす。
青藍高校の制服を着たいが為に受験勉強を頑張った詩織だが、それで体力を使い果たしたらしく、定期テストの点数は最悪。
その結果が、直樹の件だ。
「ゆかは、頭がいいの?」
「前の学校では、クラスで真ん中くらい……」
「真ん中なら、いいじゃないの。私って、下か数えた方が早いわよ。だから、前に追試を……」
彼女にとって相当嫌な思い出だったらしく、眉間にシワが寄っていた。
詩織の反応にゆかは苦笑するが、窓の外の光景が気になるのだろう交互に視線を向けている。しかし言い難いのだろう、詩織が気付くのを待つ。