これが私の王子様

「水ちゃんも、そう言うの?」

「水ちゃん?」

「いけない?」

「名前の方が……」

「じゃあ、ゆか」

 詩織に名前を呼ばれ、ゆかはコクコクと頷く。

 一方詩織は嘆息すると、先程の件について愚痴を漏らす。

 青藍高校の制服を着たいが為に受験勉強を頑張った詩織だが、それで体力を使い果たしたらしく、定期テストの点数は最悪。

 その結果が、直樹の件だ。

「ゆかは、頭がいいの?」

「前の学校では、クラスで真ん中くらい……」

「真ん中なら、いいじゃないの。私って、下か数えた方が早いわよ。だから、前に追試を……」

 彼女にとって相当嫌な思い出だったらしく、眉間にシワが寄っていた。

 詩織の反応にゆかは苦笑するが、窓の外の光景が気になるのだろう交互に視線を向けている。しかし言い難いのだろう、詩織が気付くのを待つ。

< 14 / 211 >

この作品をシェア

pagetop