これが私の王子様

 雅之は立ち上がると、ゆかに息子の為に早速料理を作ってほしいと頼む。

 もっと色々なことを聞かれると予想していたゆかにとって、これは以外そのもの。

 だが、逆に長い質問攻めに遭わないで済んだことに、安堵する。

「台所に、案内しよう」

 置いていかれないようにゆかはすぐに立ち上がるが、脚が痺れてしまったらしく、上手く歩けない。

 その場で硬直しているゆかを見た和人は、どうして動けないのか悟ると、徐に彼女の前でしゃがみ込み、両手をひらひらと動かす。

 勿論、ゆかは何を言っているのか理解するが、これもまた恥ずかしい。

「いいのに」

「で、でも……」

「倒れて、怪我されても困る」

「私、体重が……」

「背負ってみないと、わからないよ。それに水沢さんの料理を期待しているから、早くしてほしい」

「う、うん」

 流石にそこまで言われると、断り難い。

 ゆかはオズオズとしながら和人の背中にしがみ付くと、羞恥心のあまり目を閉じてしまう。

 和人にしてみればゆかの体重は軽く、特に気にならない。
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