これが私の王子様
「軽いよ」
「よ、良かった」
「じゃあ、出発!」
その言葉と共に、和人は床の間から飛び出る。
早く料理を作ってほしい気持ちがそうさせているのか、廊下を駆けて行く。
突然駆けられたことにゆかはか細い悲鳴を上げ、それを後方で見ている雅之は大声で息子の行動を叱った。
しかし、和人が止まることはない。
食が絡むと、和人の性格が変化してしまう。
そのことを理解しているからこそ、雅之は溜息を漏らすしかできない。
やれやれという雰囲気で肩を竦めると、和人が走り去った方向へ向かう。
さて、どんな感じになるか――
久し振りに、雅之の心が弾むのだった。