これが私の王子様

「でも、これでは料理が作れません」

 そのように言われたら、ゆかの側を離れるしかない。

 和人はゆかの手料理を楽しみにしているので、作れなくなったら一大事。

 本当は作るところを見ていたいが、仕方なく彼女の言葉に従う。

 和人が離れてくれたことに、ゆかはホッと胸を撫で下ろす。

 そして全ての材料をテーブルに並べると、それらを眺めながら、どの料理から作ろうかと、頭の中で計画を立てていく。

(よし、あれから……)

 どの料理から作るか決まり、ゆかは自分自身に気合を入れる。

 いつも両親相手に料理を作っているが、今回は和人に作らないといけない。

 はじめての異性への料理なので、美味しい料理を作って喜ばれたい。

 その気持ちが先頭に立ち、いつになく真剣な表情で料理を作る。

「何故、そこにいる?」

「水沢さんに、言われた」

 椅子に腰掛け遠くから眺めている和人に、雅之は声を掛ける。

 今、ゆかは料理に集中しているので、邪魔をしてはいけない。

 というか、側にいてほしくないと言われたと、正直に伝える。
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