これが私の王子様

「なるほど」

「父さんは、どうする?」

「作り終えるまで、仕事している」

「じゃあ、終わったら呼ぶよ」

「頼む」

 それだけを言い残すと、雅之はその場から立ち去る。

 一人残った和人は、いそいそと動いているゆかの後姿を眺め、うきうきとしながら料理ができるのを待つ。

 包丁が、リズミカルにまな板を叩く。

 この音はハナがよく奏でているので、和人は聞き慣れている。

 慣れているが、この音を聞いていると食欲が刺激されてしまう。

 そっと胃袋を撫でれば、空腹を訴えるかのように鳴る。

(や、やばい)

 このままでは、空腹すぎて倒れてしまう。

 そう感じた和人は椅子から腰を上げると、いそいそと冷蔵庫に向かう。

 和人の不可思議な姿にゆかは首を傾げつつ、何をしているのか尋ねる。

「は、腹が……」

「空いているのですか!?」
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