これが私の王子様

 オーブンが、焼けたことを知らせる音を響かす。

 ゆかが焼けたパンを皿の上に載せると、その上に和人好みの半熟の目玉焼きを載せ、完成させる。

「どうぞ」

「いただきます」

 和人は、大口で齧り付く。

 その見事な食べっぷりに、ゆかは驚きを隠せない。

 しかしこのように食べてくれるということは、作った料理を気に入ってくれた証拠。

 瞬く間のうちに、和人の胃袋に納まってしまう。

 簡単に作った料理だが、和人にとっては満足そのもの。

 そして「美味しかった」と感想を言うと、もう一枚食べたいという。

 流石、鉄の胃袋――ゆかは思わず、クスクスっと笑ってしまう。

「な、何?」

「そういう風に食べて貰ったのは、はじめてで……嬉しかったのです。あ、あの……料理、頑張ります」

「よろしく」

「はい!」

 目玉焼きを載せたパンだけで、これだけ喜んでくれたのだから、手の込んだ料理を作ったらどうなるのか。
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