これが私の王子様
その時、黄色い悲鳴を上げていた女子生徒達が、一斉にある方向へ向かって流れていく。
彼女達の邪魔になってはいけないと、ゆかと詩織は慌てて廊下の端に避け、慌ただしい行動を眺める。
「皆、どこに――」
「昇降口ね」
「昇降口?」
「ああ! そうだったわ」
青藍高校の王子様の話をしていたことを思い出したらしく、詩織はしまったという表情を作りつつ、ゆかに謝る。
詩織の話でわかったのは、女子生徒達の目当ては王子様に会うこと。
詩織はゆかに「見に行こう」と言葉を掛けるが、王子様がどのような人物かあれこれと想像してしまい、ゆかは緊張してしまう。
「行かない?」
「い、行くわ」
「紹介もしてあげる」
「そ、そこまで……」
だが、心の片隅では「会いたい」という気持ちがあったのだろう、オドオドとしながらゆかは詩織の後に続く。
昇降口に向かうにつれ人だかりが多くなり、同時に煩いまでの黄色い悲鳴が響く。