これが私の王子様

「家事全般の方は?」

「だ、大丈夫です」

「それは、頼もしい」

「昔から母の手伝いをしていまして、料理もそうですが、掃除や洗濯も……時々、母の代わりにやります」

 ゆかの話に、雅之の双眸が光る。

 料理も作れず掃除もしない、自堕落な生活をしている和人にとって、これ以上相応しい人物はいない。

 これを逃したら後がないと考えた雅之は「水沢ゆか」の家庭環境を調べることにする。

 父親の考えに全く気付いていない和人は、恍惚な表情を浮かべながら料理を黙々と食べ進める。

 それを嬉しそうに眺めているのがゆか。

 いい雰囲気の二人に、雅之の中では素敵なカップルと認識される。

 これ以上この場所にいたら邪魔になると判断した雅之は「後は、仲良くやるといい」と言い残し、立ち去ってしまう。

 雅之の言い方にゆかは過敏に反応を示すが、和人は反応を示さない。

 それどころか「ご飯、おかわり」と、ゆかの目の前に茶碗を差し出す。

 しかし雅之の言葉が気になり、受け取ろうとはしない。
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