これが私の王子様

 なかなか言ってくれないことに、ゆかは決して怒ることはしない。

 それどころか、何を言うのか心臓を激しく鼓動させて待つ。

 一方和人は何度か深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着かす。

「料理を……」

「料理……ですか」

「そう、土日に……」

「ま、また」

「駄目?」

「い、いえ……」

 てっきり、一度だけ作ればいいと考えていたゆかにとって「また、作ってほしい」と言われることは、意外そのもの。

 しかし和人はゆかの手料理を気に入り、完全に虜になってしまった。

 ゆかに調理を作ってもらう前は「祖母の料理が最高」と言っていたが、今では祖母の手料理では満足できなくなってしまった。

 それほどゆかの手料理は魅力的で、プロ級の腕前を持つ。

「あの……また、こちらで……」

 ゆかの質問に、和人は頭を振る。居心地が悪いというわけではないが、和人は実家より一人で暮らしている方が楽。

 だから「できたら、今暮らしているマンションで作ってほしい」と、頼む。
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