これが私の王子様
「もう、食べたのか」
「美味かったから」
「で、茶で寛いでいるのか」
「味付けもそうだけど、茶の淹れ方も上手い。今日、水沢さんに作ってもらってよかったよ」
「お前が、そこまで言うのは珍しい」
「そう?」
「ああ」
「で、父さん」
と言いつつ、和人は椅子から腰を上げる。
これから行う話は、ゆかに聞かれてはいけない――というわけではないが、聞かれると気分を重くなるのは間違いない。
だから父親と共に部屋の隅へ行くと、ゆかの父親について話す。
「それは、本当か?」
「水沢さんが言っていた」
息子の話に、雅之は嘆息する。
雅之としてみれば、和人といい関係になってほしかった。
しかしその間に立ちはだかるのは、ゆかの父親。
これをなんとかしなければ、後が続かない。