これが私の王子様

 これは問題だと、雅之は考える。

 本来、子供の幸せを願うのなら、交際を認めないといけない。

 しかしゆかの父親の場合、それを許さない。

 息子からの訴えに雅之は、ゆかに好意を抱いているものだと予想していたが、よくよく聞けば違うことで悩んでいる。

 このままでは、ゆかの料理が食べられない。

 彼にとっては、こちらが重要だった。

 予想外の内容に雅之は呆れてしまうが、そのような内容であっても切っ掛けは重要である。

 彼女の料理からスタートして、このまま上手くくっ付いてくれたら、何も言うことはない。

「お前は、どうしたい」

「一応、友人に相談して……」

「なら、こちらはこちらで何とかしよう」

「なんとか?」

「心配しなくていい」

「その言い方、不安……」

 和人は父親が持つ権力の大きさを知っているので、相手側に何かとんでもないことが起こるのではないかと危惧する。

 息子の不安に雅之は、再度「心配しなくていい」と、言い返す。
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