これが私の王子様

 流石に二回も言われているので、信用しないわけにはいかない。

 それに今まで権力を行使して、大事に発展したことはない。

「信用しないのか?」

「そこまで言うのなら……」

「任せておけ」

 そう言い、雅之は息子の肩を叩く。

 和人は、ゆかを一瞥する。

 すると、心配そうにこちらを見ているゆかに気付く。

「ほら、行ってやれ」

「う、うん」

「後で、彼女は自宅まで送ろう。それまでは、ゆっくりと話すといい。こういう機会は、ないだろう」

「確かに……」

 学校では周囲の目が気になるので、ゆかとゆっくりと話したことはない。

 もし話している現場を目撃されたら、女子生徒から何を言われるか。

 最悪、ゆかが攻撃の対象となってしまう。

 それだけ彼女達の執着は、半端ない。

 だからこういう機会は、和人にとっては貴重といっていい。
< 163 / 211 >

この作品をシェア

pagetop