これが私の王子様
父親からの提案に、和人は頷く。
いつもであったらあれこれと言い返してくるが、ゆかに関しては素直に受け入れる。
なんともわかり易い性格に雅之は苦笑するしかできないが、これはこれでいい兆候といっていい。
和人はいそいそとゆかのもとへ戻ると、新しいお茶を淹れてほしいと、湯呑を差し出す。
まだ付き合っていないので少しは遠慮しないといけないが、和人の行動の中に「遠慮」の文字はない。
(まったく)
そう心の中で呟くと、雅之は仕事に戻る。
それに唯一気付いたのはゆかで、一方和人は早くお茶を淹れてほしいと、ゆかを促している。
普通であったら「私は、家政婦?」と考えてしまうが、根が優しいゆかがそのようなことを考えることはない。
ただ和人の頼みごとを聞き入れ、熱々の新しいお茶を用意するのだった。
「ところで、水沢さん」
「は、はい」
「料理が趣味と言っていたけど、他に何かある?」
「他と言いますと……」