これが私の王子様

 この質問は答え難かったのか、口籠ってしまう。

 ゆかは料理以外、趣味らしい趣味は持っていなかった。

 料理を作ることが楽しく、それに集中してしまうからだ。

 ただ無理矢理趣味として上げるのなら、ファンタジー小説を読むこと。

「面白い?」

「面白いです」

「どういうところが、オススメ?」

「私、非現実的な話が好きでして、特に魔法とか興味があります。昔、使えるのではないかって、思っていて……」

「可愛いな」

「そ、そんなことは……」

 急に和人に「可愛い」と言われ、赤面してしまう。

 彼から「可愛い」と言われたのは二回目だが、ゆかにとってこの単語の破壊力は抜群。

 言われた瞬間、心臓が一度ドクっと力強く鼓動する。

「読んでみたいな」

 ゆかが好むファンタジー小説に興味を持ったらしく、和人はゆかが一番オススメとしている小説を貸してほしいと頼む。

 彼からの頼みにゆかは嬉しそうに何度も頷くと、目を輝かす。
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