これが私の王子様

 友人の中に、ファンタジー小説を読む者はいない。

 だから、このジャンルで話しをできる人がほしかった。

 一時期、詩織に進めようとしていたが、いかんせん詩織は読書を好んでする方ではない。

 教科書を読むのもやっとの状況で、細かい字が密集している小説を最後まで読めるだろうか。

 結論は、否。

 途中でリタイヤは、目に見えている。

 しかし和人なら、苦にならず最後まで読んでくれるだろう。

 そして感想を聞けたら、ゆかとしては嬉しい。

「明日、お持ちします」

「嬉しいな」

「魔法……で、いいですか?」

「勿論」

「はい!」

 元気よく返事を返すと、ゆかは珍しく饒舌になる。

 読んでいる本の感想。

 また、どういう世界観か。

 熱く語るゆかに対し、和人は表情を綻ばせながら聞き入る。

 時折相槌を打ち、決してゆかの話を遮ることはしない。
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