これが私の王子様
ゆかは画面に微笑を浮かべると、ベッドに携帯電話を置く。
そして腰を上げ向かったのは、本棚。
そう、和人との約束の本を探さないといけない。
(あの本は……)
綺麗に並べられている、背表紙を眺める。
これもまたゆかの性格が反映しているのだろう、全ての本に埃が被っておらず、殆ど日焼けもしていない。
定期的に掃除をしている証拠で、この本をどれだけ大切にしているかわかる。
(あっ! これこれ)
ふと、一冊の本を手に取る。
表紙に書かれているのは「魔法使いの冒険」で、題名の通り魔法使いの男の子が活躍する話だ。
久し振りに読みたくなったのだろう、その小説を手にベッドに腰を下ろすと、ページを捲っていく。
(懐かしい)
文字を読み進めるだけで、この話がどのようなものだったか思い出す。
男の子は一流の魔法使いだが、だからといって何でも万能にこなすわけではなく、様々な苦労をし、それを乗り越えていく。