これが私の王子様

 だからこそ、手を貸す。


 そこまで言われているのなら、引き受けちゃいなさい。


 これは「土日に、料理を作ってほしい」と言われたことに対しての返信。

 期待されているのなら、それに応えた方がいいと詩織は説明する。

 それに、胃袋を掴まえるのは恋愛の極意のひとつ。

 ゆかは一回の手料理で、和人の胃袋を掴んでしまった。

 それも相手は、巨大グループの御曹司。

 それについてゆかは自覚していないが、とんでもない人物を落としてしまったといっていい。

 現に和人は、以前美味しいと言っていた祖母の料理では満足できなくなり、ゆかの料理を求めている。


 頑張ってね。


 その言葉で、メールが締めくくられていた。

 この言葉の意味にゆかは気付いていないが、詩織は和人とゆかが付き合えばいいと考えている。

 彼女ほど「大和撫子」に相応しい者はいない。
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