これが私の王子様

 ゆかも内心、和人の為に手料理を振る舞いたいと考えていた。

 何せあれだけ喜んでくれるのだから、作っていて楽しい。

 それに味付け等好みが一致しているのだから、何かの縁を感じる。


 お願いします。


 そう、詩織に返信する。

 その時、一階から声が聞こえて来る。

 この声の主はゆかの父親である、水沢仁志(みずさわひとし)。

 父親の帰宅にゆかは携帯電話を持ちながら、一階へ降りて行く。

「お父さん」

「帰って来ていたのか」

「遅くなると、お父さんが怒るから」

「当たり前だ!」

 間髪入れずに、仁志の大声が響き渡る。

 仁志にとってゆかは、大事な一人娘。

過保護であるが、少々行き過ぎている部分がある。

 門限も指定され、その時刻を過ぎると叱られてしまう。

 以前はそれが当たり前と思っていたが、和人や詩織と出会い変化が生じる。

 クラスメイトの中には、バイトを行っている者が多い。

 その者達は、門限の時刻外に出歩いている。

 それに自由に恋愛し、高校生活を満喫している。

 一方ゆかは、父親によってあれこれと縛り付けられている。
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