これが私の王子様
これ以上言っても無理と判断したのか、亜由美は何も言うことはしない。
ただ、黙々とキッチンで夕食の準備を進めていく。
だが、何かを思い出したのだろう、野菜を切る手が止まる。
「そういえば今日、スーパーに高級車が止まっていたと噂になっていたの。何でも、女の子が乗っていたって」
「こ、高級車」
母親の言葉に、ゆかの身体がピクっと反応を示す。
その高級車に乗っていたのは、間違いなくゆか。
しかし、このことを言うことはできない。
「高級車でスーパーとは、金持ちはわからないな」
「ほんと」
「ゆかも、そう思うだろう?」
「う、うん」
流石に自分が乗っていたので、両親の意見に同調することはできない。
それどころか、顔が引き攣ってしまう。
「ゆか、どうした?」
「な、なんでもない」
「それなら、いいが」