これが私の王子様

「流石、詩織」

『その現場、見たことがあるもの』

「そうなの?」

『何度も』

「そうなんだ……」

『そういえばゆかって、初恋の経験がなかったわよね。もしかしたら、これが初恋になるのかも』

「そうなの……かな」

『そうよ! ゆかって、結城君が持つモノって好き? 見たところ、興味はなさそうだけど』

 それについて、ゆかは無言を突き通す。

 こういうと「欲が無い」と言われるだろうが、ゆかは和人が持つモノに興味が湧いてこない。

 それ以上に自分が好きなファンタジー小説に興味を示してくれた方が嬉しく、また料理が美味しいと言ってくれた。

 それだけで、いい。

 無垢というか純粋というか、今まで見たことのない女の子。

 現代に、こんな女の子がいてもいいのか――と、詩織は苦笑してしまう。

 ここまでくると、天然記念物クラスといっていい。
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