これが私の王子様

「婆ちゃんの手料理より、美味かった。味付けも最高だったし、最後の茶の淹れ方も……って、どうした?」

 ゆかの手料理を熱く語る和人に、薫と直樹は半笑い状態。

 今まで異性について語ったことのない和人が、このように語っている。

 薫は直樹に「胃袋を掴まれたな」と囁くと、直樹は「そうだね」と、返す。

 和人がどのようなことで異性に落とされるのだろうと、薫と直樹は興味津々だった。

 それが、手料理一回で落とされた。

 食欲旺盛の和人らしいと、二人は思わず吹き出してしまった。

「お、おい」

「いいんじゃないか」

「そのまま、付き合えばいいよ」

「付き合う!」

「俺は、いいと思うけど」

「同感」

 ゆかの手料理をもう一度食べたいと考えていたが、彼女と付き合うことは考えていなかった。

 といって彼女のことは嫌いではないし、何より鬱陶しく纏わりついてくることをしない。
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