これが私の王子様

「もしかして、貴女!?」

「ち、違うわよ」

「そういう貴女が、そうなんじゃない。アドレス聞けないからって、毎日手紙を書いていたじゃない」

 その発言に、三人はあることを思い出す。

 それは「下駄箱、大量ラブレター事件」である。

 毎日同じ筆跡の手紙が和人の下駄箱の中に入っており、文面も毎回同じことが書かれている。

 彼女にとっては愛の告白なのだが、受け取る側にしてみたら不幸の手紙そのものといっていい。

 一見、大人しい子ほど行うことが大胆というが、まさに手紙を書いた女子生徒はそれに当て嵌まる。

「マズかったか?」

「……かなり」

「悪い」

 まさか大声ひとつでここまで大事に発展するとは思ってもみなかったのだろう、薫と直樹は素直に謝って来る。

 一方言い争いは過熱し、更に違う生徒も加わるのだから、収拾がつかない。
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