これが私の王子様
「す、すみません。てっきり、一人暮らしなので料理が作れると……あっ! 結城君は、お金持ちで……でも、それだと……」
御曹司という立場と、和人が話していたことが矛盾していることに気付いたゆかは、首を傾げてしまう。
一般的に金持ちの家は家政婦を雇っており、その者があれこれと世話をしてくれる。
いくら一人暮らしをしているとはいえ、家政婦を雇えばきちんと食事の準備もしてくれるだろう。
しかし、和人はそれを行わない。
何故?
と、疑問に思うが流石に口にはできなかった。
「そう言う水沢さんは、料理作れる?」
「はい。料理を作るのが、趣味なので」
「美味い?」
「お父さんとお母さんは、美味しいと……」
「なら、昼の弁当も自分で?」
和人の質問にゆかは、頷き返す。
彼女の反応に和人は、明後日の方向を眺めながら、昼ゆかが食べていた弁当の中身を思い出していく。思い出されるのは色彩豊かな料理の数々と、具材が混ぜ込まれたご飯。