これが私の王子様
ゆかは謙遜しているが、あれだけの料理を自分で作ったとなると、相当料理が上手いのは間違いない。
見た目からしてプロの料理人が作った物に等しく、あの時和人は暫く凝視してしまった。
美味しそうな料理を見て彼女の料理の腕前に興味を示したのか、和人は「今度、食べてみたい」と、言い出す。
「ゆ、結城君に!?」
「いけない」
「お、美味しくないです」
「だけど、今日の昼飯は水沢さん手作りだろう?」
「そうですけど……」
趣味で毎日料理をしているので失敗ということは有り得ないが、父親以外の異性に食べて貰ったことがない。
それも相手が同年代の人気者なのだから、過度に緊張し視線を思わず逸らしてしまう。それに和人は何が好きで何が嫌いなのかわからないので、その点も混乱のひとつであった。
いや、それ以前に問題も多い。
校門前で和人と待ち合わせをしていた時も、女子生徒達から突き刺さるような視線を向けられていた。
その状況で和人に手料理を渡したら、今以上に学校に居づらくなってしまう。